ブルーカーボンとは、海洋生態系が吸収・貯蔵する炭素のことであり、特に海草藻場、マングローブ林、塩性湿地などの沿岸生態系が関与しています。
地球温暖化の主な要因である二酸化炭素(CO2)は、大気中だけでなく、森林や土壌、海洋にも吸収されます。その中でも、ブルーカーボンは海洋の生態系による炭素の貯蔵を指し、陸上の森林などによるグリーンカーボンと対比される概念です。沿岸の生態系は、光合成によってCO2を取り込み、炭素を有機物として固定します。その後、枯死した植物や堆積物として長期間にわたって炭素を貯蔵するため、温暖化防止に寄与します。特にマングローブや塩性湿地のような環境は、土壌に炭素を蓄える能力が高く、熱帯地域の森林に匹敵する炭素固定能力を持つとされています。これらの生態系は、CO2の吸収効率が高く、かつ長期間にわたり炭素を保持するため、気候変動対策として注目されています。

ブルーカーボンの役割は、気候変動の緩和にとどまらず、生物多様性の保全や持続可能な漁業の促進にも貢献する点にあります。
ブルーカーボン生態系は、CO2の吸収・貯蔵という気候変動の緩和効果に加え、生態系サービスの面でも重要な役割を果たします。例えば、海草藻場やマングローブ林は、多くの海洋生物の産卵や成長の場となり、生物多様性の維持に寄与します。また、これらの生態系は自然の防波堤として機能し、沿岸地域を台風や高潮、津波から守る効果もあります。さらに、炭素クレジットなどの市場メカニズムと組み合わせることで、持続可能な経済活動の一環としての活用も期待されています。一方で、沿岸開発や水質汚染によって、これらの生態系が破壊されると、貯蔵された炭素が大気中に放出され、逆に気候変動を加速させる可能性があるため、保全と適切な管理が求められています。
ブルーカーボンの活用には、国際的な枠組みと地域ごとの取り組みの両方が重要であり、政策や技術の発展が鍵となります。
近年、国際的な気候変動対策の中でブルーカーボンの重要性が高まっており、パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)とも連携した取り組みが進められています。特に、CO2排出量の削減目標を達成するための手段として、各国政府や企業がブルーカーボンの保全・回復プロジェクトを推進する動きが見られます。例えば、日本では、沿岸部の藻場再生やマングローブ植林のプロジェクトが進行中であり、これらは地域の漁業資源の保全にもつながっています。また、ブルーカーボンの炭素固定量を科学的に測定・評価する技術の発展も進んでおり、より精密なデータに基づいた政策決定が可能になりつつあります。このように、ブルーカーボンは気候変動対策のみならず、持続可能な社会を実現するための重要な要素となっており、今後もその研究や実践が求められる分野です。