専門用語集

「ネイチャーポジティブ」とは

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、自然環境を回復・再生させることを目指す概念です。

ネイチャーポジティブ(Nature Positive)は、地球環境の悪化を防ぐだけでなく、生態系をより良い状態へと回復させることを目的とした考え方です。従来の環境保全のアプローチでは、自然破壊を抑える「被害の最小化」に重点が置かれていましたが、ネイチャーポジティブはそれを超えて、積極的に自然を回復させることを目標としています。この概念は、生物多様性の損失が加速度的に進行している現状を踏まえ、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、それ以降は回復軌道に乗せることを目指しています。具体的な取り組みとしては、森林の再生、湿地やサンゴ礁の修復、生態系に配慮した土地利用計画などが含まれます。さらに、企業や自治体の活動においても、生産や開発の過程で生じる環境負荷を相殺し、より良い環境を創出する戦略が求められています。

ネイチャーポジティブの目的は、持続可能な社会の実現と生態系の健全性の回復にあります。

ネイチャーポジティブが目指すのは、単なる環境保護ではなく、人間社会と自然の共生を実現することです。例えば、気候変動の影響を緩和するためのカーボンオフセットと同様に、企業や政府が環境負荷を与えた分を超える形で自然を回復させる取り組みが求められています。農業や漁業、都市開発などの分野では、持続可能な方法で資源を利用しながら、生物多様性を回復させる施策が重要視されています。さらに、国際社会では「昆明・モントリオール生物多様性枠組(Global Biodiversity Framework)」を通じて、ネイチャーポジティブの目標が具体化されつつあります。この枠組みでは、2030年までに陸域と海域の30%を保護する「30×30目標」などが掲げられています。企業においても、環境負荷の低減だけでなく、自然資本を増加させることが求められ、ESG投資の観点からもネイチャーポジティブへの取り組みが重視されています。

ネイチャーポジティブは、サーキュラーエコノミーの推進とも密接に関係しています。

ネイチャーポジティブの実現には、サーキュラーエコノミー(循環型経済)との連携が不可欠です。従来の直線型経済(リニアエコノミー)では、資源の採取・消費・廃棄という一方向の流れが主流でしたが、サーキュラーエコノミーは資源の再利用と廃棄物の削減を通じて、環境負荷を最小限に抑えます。例えば、リジェネラティブ・アグリカルチャー(再生型農業)は、土壌の健康を向上させ、炭素を吸収しながら持続可能な食料生産を実現する取り組みの一例です。また、リサイクルやアップサイクルを促進することで、新たな資源採取による生態系への影響を軽減し、より自然に配慮した経済活動を推進できます。さらに、企業がサプライチェーン全体でネイチャーポジティブを考慮した製品設計や生産プロセスを導入することにより、自然環境の回復に貢献することが可能となります。

このように、ネイチャーポジティブは単なる環境保全にとどまらず、持続可能な社会の実現に向けた包括的な概念です。今後、企業や政府、個人レベルでもこの考え方を取り入れることが求められ、サーキュラーエコノミーと組み合わせた取り組みがますます重要になっていくでしょう。