ステークホルダー・エンゲージメントとは、企業や組織がその活動に影響を及ぼす、または影響を受ける利害関係者（ステークホルダー）と対話し、協力しながら共通の目標を実現するためのアプローチを指します。

ステークホルダー・エンゲージメントは、企業や組織がその活動の持続可能性や社会的責任を果たすために不可欠なプロセスです。ここでいう「ステークホルダー」には、従業員、顧客、地域社会、行政、投資家、NPO、サプライヤーなど、組織が影響を与え、また影響を受けるすべての関係者が含まれます。例えば、環境に配慮した商品開発やリサイクル促進の取り組みを行う際には、消費者の期待に応え、サプライヤーやリサイクル業者と協力する必要があります。サーキュラーエコノミーにおけるステークホルダー・エンゲージメントは、企業単体の力を超えて多くの協力者と共に取り組むことに価値があります。実際、製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らすには、サプライチェーン全体を通じた協力が必要です。ステークホルダー・エンゲージメントを通じて、企業や組織は自社の活動をステークホルダーに説明し、フィードバックを受け入れることで、社会的な信頼を高めることができます。

ステークホルダー・エンゲージメントの目的は、組織とステークホルダーが対話や協働を通じてリスク管理と価値創出を行い、共通の目標に向かって進むことで持続可能な社会の実現を目指すことにあります。

エンゲージメントは単なる情報発信に留まらず、ステークホルダーからの意見や期待に基づいて方針や活動を調整し、改善していく双方向のプロセスを含みます。例えば、製品の製造において環境負荷の少ない原材料の使用を検討する際、サプライヤーや地域の環境保護団体と協議を行い、影響を最小限に抑える努力を行うことが求められます。また、地域社会と連携することで、環境保全に関する新たな取り組みを生み出したり、地域経済の活性化に貢献したりすることができます。このようにして築かれる信頼関係は、企業のブランド力や競争力を強化し、ステークホルダーにとっても企業活動に参加する意義をもたらします。さらに、企業がステークホルダーと定期的に対話し、そのニーズを把握することは、潜在的なリスクを未然に防ぐための重要な手段にもなり、長期的に持続可能な成長を支える礎となります。

ステークホルダー・エンゲージメントは、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行を支えるための重要な要素であり、資源循環型社会の実現において不可欠な役割を果たします。

リニアエコノミーでは、資源を採取し、製品を生産し、消費された後に廃棄する一方向の流れが基本であり、資源が枯渇し廃棄物が増加する問題を引き起こします。一方、サーキュラーエコノミーでは、製品の寿命を延ばし、使用後も再利用や再生を促進して資源の循環を目指します。こうした目標を達成するためには、企業がサプライチェーン全体でステークホルダーと協力し、廃棄物の削減や資源の効率的な利用方法を模索する必要があります。例えば、製品のリサイクルシステムを構築する際には、リサイクル業者や消費者と協力し、回収や再利用のプロセスを整備することが重要です。また、業界団体や自治体とも連携して法的・社会的な支援体制を整えることで、企業の取り組みを後押しすることもできます。こうしたステークホルダー・エンゲージメントによって、企業とステークホルダーは持続可能な価値を共創し、サーキュラーエコノミー実現に向けて前進することができるのです。