自然資本会計とは、自然資源や生態系サービスを経済の価値として評価・測定するための方法です。

企業や政府が行う経済活動は、しばしば生態系や自然資源に依存しています。自然資本会計は、これらの資源やサービスを経済価値として認識し、評価する枠組みです。従来、企業や経済の成長は財務指標だけで測定されてきましたが、自然資本会計では、資源を「自然資本」として捉え、それが社会や経済にとってどのような利益やサービスを提供しているのかを見極めます。たとえば、森林が提供するCO2の吸収、土壌の肥沃さを維持する役割、水源の保護といった自然の働きには、通常の会計基準では測れない価値が含まれています。これらを具体的に把握し、定量化することで、持続可能な資源利用の促進と環境負荷の低減が期待されます。

自然資本会計の目的は、企業や政策決定において環境影響を定量的に評価し、持続可能な経済の実現に寄与することです。

自然資本会計の導入により、企業は資源消費や環境への影響を見える化でき、持続可能なビジネスモデルの構築が進みます。また、これにより投資家や消費者が、環境リスクを考慮した意思決定を行うことが可能になります。自然資本会計の実践例として、企業が自社の森林保有量、空気浄化の価値、CO2排出量などを貨幣価値として計上する取り組みがあります。これにより、環境への影響が可視化されるだけでなく、負の環境影響を回避するための対策を打つことができます。例えば、リスク管理や資源の枯渇によるコスト削減を目指す企業は、自然資本会計を活用して保全活動や資源効率化策を強化し、持続可能な成長を目指します。

自然資本会計は、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへと転換するための重要な枠組みと位置づけられます。

リニアエコノミーでは、資源の採取、生産、使用、廃棄が一方向に進みますが、自然資本会計を導入することで、資源の循環を考慮した経済活動が可能になります。企業が生産プロセスでの資源の循環と環境負荷の低減に取り組む際、自然資本会計はその経済的・社会的価値を示す指標となります。たとえば、企業は再生可能エネルギーへの投資や廃棄物削減において自然資本会計を参考にし、長期的に持続可能な資源の活用と、地球環境の保全に寄与することができます。こうした枠組みを通じて、企業や政府の環境意識が向上し、持続可能な社会に向けた具体的な行動が促進されるのです。

このように、自然資本会計は環境と経済の価値をつなぐツールであり、持続可能な未来に向けたサーキュラーエコノミーの基盤とも言えるでしょう。